トリガーポイントに対する鍼の適応
「筋肉の痛み」は「痛み」の一要素です。不良姿勢による反復的な作業、スポーツ活動によるオーバーユース等で「筋肉の痛み」を引き起こします。その中に「筋筋膜トリガーポイント」によるものがあります。筋筋膜トリガーポイントは、筋に索状の硬結を触れ、その索状硬結が引き金となり、関連痛として別の場所に痛みを引き起こします。
トリガーポイントと姿勢の関係
猫背などの不良姿勢による反復的な作業は、良い姿勢と比較し、筋内を走行する血管に物理的なストレスを与え、虚血状態をもたらします。不良姿勢での作業を長時間続くと、筋に反復的な負荷が加わり、硬結を起こしやすくなります。また虚血状態は、筋内で発痛物質を留めてしまうため、痛みを誘発しやすくなります。さらに、筋に血流が十分に行き届かないと回復の遅延につながります。不良姿勢は、筋肉の環境にも悪い影響を与えてしまいます。日々の良い姿勢の徹底は、非常に重要なのです。
筋筋膜トリガーポイントは、不良姿勢での荷物運びやデスクワーク等による反復的な日常生活動作で起こります。特徴的な症状として筋にロープ状の索状硬結を触れ、個人差はありますが、その索状硬結が特定の関連痛パターンを引き起こします。関連痛パターンは筋肉によって異なります。例えば、殿部筋の一つである小殿筋にトリガーポイントが存在する場合、小殿筋の関連痛は殿部のみでなく、大腿部からふくらはぎの外側や後面にも痛みを訴える事があります。筋肉によっては、局所だけでなく、末梢に痛みが放散することが多いです。痛みの種類が筋筋膜トリガーポイントによるものである場合は、痛みを訴える部位に治療を施すよりむしろ、痛みの元となる索状硬結部位にも治療を施す必要があるのです。
トリガーポイントへの鍼治療の適用
鍼治療は、筋筋膜トリガーポイント治療を行う上で非常に有効であると考えます。他の治療法として低周波治療機器等の物理療法やマッサージ、及びストレッチング等があげられます。これらの治療法もすごく有効なのですが、索状硬結は筋の深部に存在するため、直接刺入可能な鍼が前述の条件に適合しています。他の治療法との併用が良いと考えます。
筋肉の痛みがある状態は、少なからず骨格全体の歪みを引き起こしていると推測できます。骨格の歪みは、身体の唯一の動力源である筋肉の緊張をもたらします。筋肉の緊張は、虚血状態を引き起こし発痛物質を留め、その発痛物質がさらに筋肉の緊張を誘発してしまうという負のスパイラルを引き起こします。負のスパイラルを断ち切る方法として、骨格の歪みを整えることが大切です。筋筋膜トリガーポイントを元から治すために、鍼治療やストレッチ等の治療の他に、骨格の歪みの矯正も非常に有効です。