小児の不安定(整復困難)な前腕骨両骨骨折
5歳男児。自宅で遊んでいた際、高いところから落下し左手首を衝いて捻って負傷した。当院に来院。腫脹、疼痛、変形、皮下出血著明を認め、超音波画像にて確認を行う。応急処置を施し、近医にて精査を依頼。前腕骨両骨骨折と判明(図1、図2、図3、図4)。
両前腕骨骨折は、両前腕骨の不均衡で徒手整復維持が困難なケースが多く、ギプス内で再転位するケースが殆んどである。今回のケースは徒手整復困難事例(小児の騎乗位)であり、末梢骨片転位はコーレスと同じであるが骨折線は逆コーレス型を呈している。成書でも徒手整復困難が報告されている。小児でも将来の機能制限が残される可能性が十分考えられる場合、早期のフィンガーズトラクションギプスが適用されることが要求される。
フィンガーズトラクションギプスを適用する。毎日牽引を加えながら牽引力の調整や牽引テープのチェックを行う。有窓ギプスにして骨折片の調整、皮膚の状態の観察や軽擦、理学療法を施す。牽引療法でのギプス固定は、関節拘縮が殆んど見られないので、早期の運動療法が可能であるメリットがある(図5)。
フィンガーズトラクションにより骨軸が正常となり安定性がでる(図6)。
前後に転位あるも骨軸はかなり戻ってきている(図7)。
アライメントが正常となり、超音波画像でも化骨が認められている(図8、図9、図10)。